右の写真は、毛乳頭細胞の中を蛍光顕微鏡で観察した様子です。
核は青色、ミトコンドリアは橙色、そして、微小管と呼ばれるタンパク質を緑で見えるように特殊な処理を施しています。
細胞の情報であるDNAを蓄えた核(青)が見えます。
この中に詰まった遺伝情報がタンパク質へと形を変えて、様々な機能を
発揮します。
ATP合成を行うミトコンドリア(橙)は点在し、その位置は一見、無秩序に見えますが、良く見てみると、そうでないことが分かります。
ミトコンドリア(橙)は微小管(緑)と呼ばれるレールタンパク質の上に並んでいます。
微小管には方向性があり、キネシンも決まった方向にしか進むことができないので、 ミトコンドリアが行き先を間違えることはありません。
ミクロの世界では、このような厳密な制御のもとで生命活動が営まれています。
(尚、キネシンが二足歩行で運動する事を世界で初めて証明したのが、当研究所所長の加世田で、その業績は世界で語り継がれています。)
当研究所では、ミトコンドリアのエネルギー生産の実態を明らかにする為に、ミトコンドリアのライブイメージングに挑戦しています。そして遂に、生きた毛乳頭細胞内でミトコンドリアが輸送されている現場をとらえることに成功しました<動画1>。
毛乳頭細胞の中で白くてミミズのようなものが動いている様子が分かります。これがミトコンドリアです。
このような動画の撮影に成功したことにより、毛乳頭細胞内におけるミトコンドリア輸送の実態が見えてきました。
ミトコンドリア輸送の実態を解明する為に、更に解析を進めてみました。
左図<図5>のように、各々のミトコンドリアの瞬間運動速度の経時変化を見ると、速度が目まぐるしく変わっている様子が分かります。また、逆向きに動く事もあり(マイナス値で表示)、時間と共に運動モードが変わっていることが推測されます。